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第106回学術集会(平成15年10月5日)
【一般演題】
血液・凝固 妊娠初期に発症した深部静脈血栓症により診断に至った先天性AT III欠損症の一例
印出 佑介, 西 弥生, 三浦 敦, 川瀬 里衣子, 山口 昌子, 村田 知昭, 米山 芳雄, 澤 倫太郎, 竹下 俊行
日本医科大学産婦人科
先天性Antithrombin III(AT III)欠損症は血中AT III低下により凝固機能亢進状態をきたし,種々の要因により静脈系を中心に血栓を形成する常染色体優生遺伝疾患である.今回我々は妊娠初期に深部静脈血栓症を発症し,診断に至った先天性AT III欠損症の一例を経験したので若干の文献的考察をまじえて報告する.症例は27歳1回経妊0回経産.26歳時,妊娠7週で不全流産の既往あり.家族歴に特記すべき事項はない.当院で妊娠のfollow upを継続中,妊娠9週6日に左下肢の深部静脈血栓症を発症し,精査により抗カルジオリピン抗体IgM値の上昇,Protein S活性の低下,AT III活性および抗原の低下が指摘され,AT III欠損症type 1,Protein S欠損症,抗リン脂質抗体症候群と診断した.深部静脈血栓症に対してurokinase投与は行わず,Heparin Ca,AT III製剤投与によって血栓は消失し,以降再発や症状の増悪を認めることはなかった.その後継続的にHeparin Ca,AT III製剤の投与および下肢静脈エコーによりfollow upを行った.妊娠経過中に羊水過少症やIUGRをはじめとする合併症の発症はなく,妊娠36週5日に前期破水から経膣分娩に至った.児に外表奇形は認められなかった.分娩後はAT III消費の亢進に対してHeparin Ca,AT III製剤の投与を直ちに開始し,内科的follow upを行っている.先天性凝固因子欠損または低下症合併の妊婦では妊娠を契機に症状の増悪を認めることが多く,今回の症例では妊娠中の深部静脈血栓症の発症から抗凝固因子欠損症を疑って診断を進めることができた.
日本産科婦人科学会関東連合地方部会会報, 40(3)
338-338, 2003
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